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バンドレコーディングの新しい形。ZYLIA ZM-1を飛澤正人が試す

2019.02.13

友人と楽器を持ち寄って同じ部屋でセッション。そのアンサンブルが「いい感じ」なので、マイク1本を立ててそのままレコーディング。これは、多くのミュージシャンが経験のあることだろう。1本のマイクでレコーディングをしているので、当然ながら後から個別の楽器の音量を調整したり、特定の楽器だけにEQやリバーブをかけるといったことはできない。

でももし「そんなこと」が「簡単に」できるようになったら、どんなに楽しいことだろう。

彗星の如く現れた摩訶不思議なマイクロフォン、ZYLIAのZM-1。ソフトボールほどの大きさの球体に埋め込まれた19個のマイクを使って、360度あらゆる方向からの音を収録、高次アンビソニックスで書き出しできるだけでなく「シグナル・セパレーション機能」を用いることで、バンドを「一発録り」したものを、後から楽器ごとにバランスやパンの調整が行える、という今までにない画期的な側面ももつ。

「レコーディングをもっと身近なものに。ホビーユースからプロフェッショナルまであらゆる環境で使えるクオリティの製品を」という信念のもと開発されたZYLIA ZM-1を使って、エンジニアの飛澤正人氏にバンドの「一発録り」からミックスダウンまでの過程をレポートしていただいた。


ZYLIA ZM-1 はその球体に19個のマイクを内蔵しており、「空間をパッケージする」というコンセプトで作られています。 使い方としては大きく分けて2パターンあって、ひとつは『マルチトラックレコーディング』。このZYLIAを囲んで演奏したミュージシャンの個々の音源をマルチトラックとして書き出すことが可能です。そしてもうひとつは360°の収録/再生です。今回の記事ではまず、マルチトラックレコーディングにフォーカスしてレポートしていこうと思いますが、後日360°VRやアンビソニックスなど、このZYLIAがどんなシーンで役立っていくのか、その魅力をお伝えしていければと思います。

まず最初に今回のテスト環境から解説していきましょう。
ZYLIA ZM-1はマイクロフォンアレイ技術を使って音源の方位を測っているため、マイクまでの距離を最低1.5mとらなければなりません。従って私のPENTANGLE STUDIOでの録音は断念し、近くのレンタルスタジオで行うことにしました。実際にこのZYLIA ZM-1を使う環境を想定すれば、このようなスペースでのテストはレポートとしてより参考になるものと思います。

本機の接続はとても簡単でUSBケーブル1本でホストコンピューターへ繋ぐだけ。今回はMacbook Proを使用したのですが、本機への電源供給がUSB経由で多少の不安定さがあったため、セルフパワーのUSBハブを経由して問題をクリアしました。私のMacbook ProのOSが10.10であったことが原因かもしれませんが、Mac Proに直接挿した時には問題がでませんでしたので、通常は直繋ぎで使えると思います。
録音設定は付属のソフトウェアZYLIA Studioでおこないますが、設定ポイントはすごくシンプルです。

(1)Separation mode
『Profile 1』=general sudio/『Profile 2』=speech

(2)Data fomat
『WAV/PCM』/『Lossless compression』

(3)Data Storage(録音場所の設定)

(1)の「Separation mode」はバンドなど音楽の録音ならば『Profile 1』。セリフなど、しゃべりがメインならば『Profile 2』。(2)の「Data fomat」は後にDAWでの作業を考えるなら『WAV/PCM』でいいでしょう。録音時のサンプルレートは48KHz 24Bit固定ですが、録音後にエクスポートすると32Bitになっていました。また録音レベルについては細かく設定できるパラメータは存在せず、“キャリブレーション”という形で行われます。これにより本機から見た音源のある方向と、レベルを19個のマイクが感知し、後に適切なトラック分けができるよう処理されます。 では次に4人のミュージシャンの配置や距離決めについてレポートしていきましょう。

前述の通りZYLIA ZM-1 にはインプットレベルを調整するパラメーターがないため、レコーディング時にはその分適切な距離感やバンド内でのアンサンブル感が求められます。今回の楽器編成は、ボーカル/コーラス(Vl)/アコギ/ピアニカだったので、ボーカルとコーラスを対角線に、その90度の位置にアコギとピアニカを配置しました。

リハで直に聴いている音量感、バランス感も悪くないのですが、“リハスタ”という環境ゆえ部屋の反射音は少し多めな印象です。借りた部屋は長方形(14帖)のスペースでマイクから各音源までの距離はギリギリ2m取れるかなという感じ。その中でなるべく距離を稼げるように部屋の4隅にミュージシャンを配置する形にしました。ただ、部屋の多めな反射を考えるとできるだけマイクまでの距離を近くした方がいいだろうとの結論で、このZYLIA ZM-1の推奨距離で最短の「1.5m」をメジャーで計測し、演奏地点を決めました。

本機は最初にそれぞれの楽器位置を覚え込ませるためにオートキャリブレーション機能を使い測定するのですが、ZYLIA Studioの設定画面にあるカタログの中から「男性ボーカル」や「アコギ」など、使用楽器を正確にセレクトし、キャリブレーションをとることが大切です。これによりセパレート時の精度が高くなります。

すべてのパートをキャリブレーション(1パート/8秒のキャリブレーション録音)し、位置を分析するまではおよそ2分ぐらいで、この時点で初めてマイクから見て「どの位置に」「どの楽器があるのか」がZYLIA Studioにインプットされ、レコーディングを開始できる状態になります。この作業は19個のマイクを使い、検出した方向にフォーカスする“バーチャルマイク”の設定のことで、このキャリブレーションによって「各音源にマイクが向けられている」という状況を作り出します。これを『仮想マイクロフォンビーム』と呼びます。

まずは軽く演奏してもらい、“各音源の被り具合”などを“シグナルセパレーション機能”を使って分離したトラックをチェック。やはり部屋の反射による被りが少し多い傾向を感じましたが、ミュージシャン同士のアンサンブル感が崩れていなかったことや、全体での音量バランスもバンド間で取れていたこともあり、このまま1.5mの距離で本番を録ることにしました。
ちなみに、最低でも1.5mの距離をとらなければならない理由は、マイクロフォンアレー技術による位置計測時の焦点距離の問題が絡んでくるからです。あと、事前チェックでオンマイク(30cmぐらい)でボーカルを試した結果、音割れが起きてしまったため、やはり近距離での録音は避けた方がいいでしょう。
それぞれのトラックをソロにして聴いてみましたが、ソフウェア定義のマイクロフォンビームもすごく自然で、1本の単一指向性マイクで正確に狙っているような印象でした。音質的にはやや中高域に寄っている感じではありますが、低音域もしっかり録れています。

このセパレートされた各音源はそのままWAVファイルとして書き出すことができ、プロツールス等のDAWでさらに音を加工、ミックスすることが可能になります。また、Recordings画面から「RAW」で書き出すと、19個のマイクで録られたトラックをそのままエクスポートすることができますので、それを3次アンビソニックスのデータへ変換し、3Dの状態でモニタリングすることが可能になります。

それではレコーディングを終えたOKテイクをエクスポートし、プロツールスへインポートしてみましょう。
ここで初めて分かったことですが、波形を見るとレベルはだいぶ小さめで録音されていました。ただ、クリップゲインで20dB上げて聴いてみると録れている音源は全く問題なく、ノイズが増える現象もありませんので、この状態でミックスを進めることにします。

+20dB処理を行なったもの

まず、今回のレコーディングの基本はマイクを囲んでの1発録りであること。それから、ミュージシャン同士が近距離であること。このセッションをミックスするにはこれらを考慮に入れながら進める必要があります。例えばそれぞれのマイクには側にいる他の音源の被りがかなり大きく入ってますから、その音源だけを考えた大きなイコライジングは、その分被りの楽器に影響を与えて位相感や定位感を壊してしまうことにもなりかねません。なので、基本的なイコライジングの考え方を、「個々の楽器の補正」だけではなく、「被りの楽器をどう補正するのか」というところまで踏み込むことが大切です。また通常の一発録りであれば最大限被りを抑えるよう工夫して各音源の位置を離して配置するのですが、今回の環境はまるでその反対。近距離でまとめて録音するといういわば特殊な録音環境なので、これを逆手に取ったミックス手法を考えなければなりません。

では最初に仕上がりイメージのパンニングから考えていきましょう。これは当然ながら録音時の配置をそのまま再現するのが一番自然になりますので、ボーカル/コーラスをセンター。左にピアニカ、右にアコギという形になります。この左右に置いた楽器で大きなイコライジングの差をつけてしまうと左右のバランスが崩れてしまうので、そこに十分気を配りながらステレオ空間を作っていきます。この近距離でのレコーディング環境では、左右に開いたピアニカとアコギがそれぞれ隣り合ったボーカル/コーラスの被りを伴いながら楽曲のステレオ感とルームアコースティック感を出せるよう調整します。


ではアコギのEQから見ていきましょう。

[2334Hz -18dB] … ピーキングで最大限Qを絞った形で切っていますが、ここは特に弦楽器の倍音が溜まりやすい帯域で、こうすることで余分なキンキンした響きを排除してコード感を鮮明にすることができます。
[349Hz -6.1dB] … この辺りはモコっとする帯域で、カットすることで音がスッキリとしていきます。
[87Hz +5.0dB] … マイクまでの距離が1.5m離れているため本来ある低音の迫力が欠けていました。なので、低域をシェルビングでぐっと持ち上げました。


次にPianicaのEQを見てみましょう。

[830Hz +3.0dB] … このポイントはピアニカの音程感を明るく強調するところで、アコギの音圧感に対して、少し弱く感じてしまうところを補うための処置です。ただ、隣のボーカルの被りがあり、上げ過ぎてしまうとその定位感を崩してしまうのでその辺りに注意しながらのイコライジングになります。
[349Hz -10.15dB] … アコギで処置したスッキリさせるためのポイントですが、ボーカル/アコギの被りに注意しつつ、アコギの音圧感と被りを軽減させるためにカットします。
[87Hz +5.0dB] … ここはアコギと同様にイコライジングします。これにより左右の低音感が揃って自然なルームアコースティックを作ることができます。


次はボーカルのEQです。

少し細かいですが、全体をまとめるために最も重要なイコライジングです。
[3868Hz -12.0dB][2334Hz -15.05dB] … この2つのポイントは先にアコギで切った倍音の溜まっているところと、もう少し上のポイントにもキンキンする邪魔なところが出ていたのでQを狭くし聴感上で切っていきます。
[2919Hz -6.15dB] … ここは迷ったポイントですが、特に張った時のボーカルの響きがギラギラしていたため、切ることにしました。このギラギラ感はマイクの特性によるものと思われます。
[349Hz -6.10dB] … アコギやピアニカでも切ったポイントですが、同様にカットします。
[209Hz -8.55dB] … このポイントはすごく重要です。ボーカルはAメロとサビとでかなりのレベル差があるためボリュームオートメーションを書いていますが、この時に被りのアコギが影響を受けないようにするための処置になります。ボーカルトラックに回り込んできたアコギの被りで比較的多かった帯域がこの200Hz付近で、ここをそのままにしておくと、ボーカルレベルを突いた時に一緒にアコギも上がったように聴こえてしまいます。
[HP US Vint 140Hz] … 最後にシェルビングで140Hz以下をカットしました。ここもアコギの被りを軽減させてレベルオートメーションに影響が出ないようにしてます。


最後にコーラス/バイオリンのEQです。

ボーカルの反対側に位置したこのトラックですが、被りの状況はボーカルとほぼ同じです。
[2334Hz -18.0dB] … ここはアコギ/ボーカルと同じ理由です。
[349Hz -4.30dB] … このポイントも同様にカットしますが、あまり切り過ぎてしまうとバイオリンが細くなってしまうので、その辺に注意して処理します。
[HP US Vint 140Hz] … ボーカルトラックと同様にシェルビングでカットしますが、こちらはアコギの被りの問題で、センターをスッキリさせる目的で処理しました。

そしてボーカルとコーラスには“レベルの暴れ”を抑えるためにWAVES CLA-2をEQの後ろにインサートし、ピーク時にうっすらとリダクションする程度にスレッショルドを設定しています。なので、張っているところ以外はほぼノーコンプ状態です。

リバーブについては全体の空間をリッチにするためのプレートエコーと、ボーカル専用のロングホールリバーブを併用して楽曲の世界観を演出しました。この2つのリバーブの役目は楽曲をリッチにする目的ともうひとつ、それぞれの被りや狭い部屋反射を隠す狙いがあります。『かけ過ぎず少な過ぎず』というところを目指した音量にしています。


最後にマスタートラックのインサートですが、今回はアコースティック楽器のレコーディングで、ベースが存在しません。そのため少し低音感が弱く、物足りなさを感じました。なので、マスターにWAVES REDD17をインサートし、Lowを6dB上げて補っています。Hiも4dBほど持ち上げて全体の抜けをよくしました。
その後段にWAVES J37をインサートして全体をアナログ的に整え、最終段にL2でピークを抑えて完成です。

 

ZYLIA ZM-1レコーディング
完成トラック

 

1点のマイクでの一発録りはさすがに初めての経験でしたが、全天球360度の方向に指向性を向けることができる“バーチャルマイク”という発想はとても斬新であり、新鮮な感覚でレコーディングをすることができました。今回は部屋が狭く、反射が多い環境でしたので指向特性の良さを示すことができず残念でしたが、もし部屋がもっと広くデッドであれば、かなり被りが少なくレコーディングできただろうと推測できます。そのぐらい指向性に優れている印象でした。
マイクの性能自体はそれほど高いとは言えませんが、コンパクトで軽量、そしてヘッドアンプなしでもここまでの音質を確保できるのはかなり優秀だと思います。


Profile プロフィール

飛澤正人

レコーディング/ミキシング・エンジニア

Dragon Ash や GACKT , HY , SCANDAL , 鬼束ちひろ などを手掛ける。 1980年代後半にフリーのレコーディングエンジニアとなって以降、日本の最先端の音楽シーンに関わり作品を作り続けてきた。イコライジングによる音の整理や奥行きの表現に定評があり、レコーディング誌へのレビューやセミナーも多数行っている。近年はアーティストへの楽曲提供やアレンジなどもこなし、より理想に近い音楽制作環境を構築すべく日々考えを巡らせている最中だ。 また2017年5月、市ヶ谷から渋谷にスタジオを移転。VRやサラウンドに対応した "PENTANGLE STUDIO" を設立し、これまでの2MIX サウンドでは表現しきれなかった360°定位のバーチャル空間をイメージした3Dミックスを提唱している。


Artist

Synonym

Vocal,Guitar加藤謙一(右)とGuitar,Chorus,Violin,本田耕(左)の2人による音楽ユニット「シノニム」。
バンド編成やサポートピアニストを迎えたアコースティック編成で都内を中心に活動中。
2017年9月、1stミニアルバム「BLUE」リリース。
2018年2月1日、スガシカオHitori Sugar2018高崎club FLEEZ公演オープニングアクト出演。
2018年12月22日、東新宿真昼の月夜の太陽にてワンマンライブを行う。
同日1stフルアルバム「夜が明けるまで」をリリース。

Web site:https://www.synonym-music.com/
Twitter:https://twitter.com/synonym_info


ギタリスト

芳賀義彦

13歳からギターを始め主に洋楽Rock,Bluesに影響を受ける。
ライブサポート、レコーディング、ギターレッスンなど。
自身のブルースロックバンド「Walking Down By Low」も活動中。
主な音楽歴
HOUND DOG, chage, aiko, ANIMAX MUSIX, and more...

Twitter:yoyoyotie
Instagram:yotie0213


Artist

中川愛菜(写真右)

たかはしまいこ(Vo,Gt)と中川愛菜(Key)による女性2人組みユニット「じゃりんこサンシャイン」にて活動中。
都内を中心にライブを行なっている。
また、個人ではライブサポート、楽曲提供等も行う。

じゃりんこサンシャイン アルバム『Pattobii Rattodii』 各種音楽配信サービスで配信中。

Twitter:@jari_sun(じゃりんこサンシャイン)
Twitter:@kacugari(個人)


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